2025/11/19

環境音

パイプスペース・ダクトのゴー音対策|静かにする3つの工夫

パイプスペース・ダクトのゴー音対策|静かにする3つの工夫

センタビ屋|防音吸音材、インテリア、建材

ゴー音の正体をつかむ|まず「どこから・いつ」鳴るか確認

パイプスペース(PS)や天井裏のダクトから聞こえる「ゴー」「ボー」という低い音。マンションや賃貸でよくある相談です。実はこのゴー音は、ひとつの原因ではなく、いくつかの要素が重なって聞こえていることが多くあります。

ゴー音の主な原因は「空気の流れ」と「配管の振動」

代表的な要因は次の通りです。

  • 換気ダクト内を通る空気の流れによる風切り音・共鳴音
  • 給排水管の中を流れる水の音と、それに伴う管の振動
  • 配管・ダクトが壁や床に当たっていることで起きるビリビリ振動
  • パイプスペースや天井点検口が「音の抜け道」になっていること

特に浴室・トイレ・キッチン周りのPSやダクトは、換気や排水のために建物の上下階とつながっており、音が伝わりやすい構造になっています。

DIY前にやっておきたい「かんたん現状チェック」

対策を選ぶ前に、次のポイントをメモしておきましょう。

  • 換気扇ONのときだけ鳴るか、常にゴー音がしているか
  • 自宅で水を流したタイミングと音の強さの関係
  • 一番うるさく聞こえる場所(トイレ天井・洗面所PS扉など)
  • PSや点検口を開けたとき、音が「直に」大きくなるかどうか

この情報があるだけで、「巻く」「塞ぐ」「浮かせる」のどこから手を付けるべきか、判断しやすくなります。

ゴー音対策の基本方針|「巻く・塞ぐ・浮かせる」の3ステップ

パイプスペースやダクトのゴー音は、発生源そのもの(空気や水の流れ)をゼロにはできません。代わりに「音の伝わり方」を変えるのが現実的なアプローチです。その考え方をまとめると、次の3つに整理できます。

巻く・塞ぐ・浮かせる
対策狙いDIY難易度よく使う材料
巻く配管・ダクトから出る音と振動を弱めるやさしい〜ふつう遮音シート・制振シート・保温材・吸音スポンジ
塞ぐ点検口やすき間からの音漏れを減らすやさしいすき間テープ・気密パッキン・薄手の遮音シート
浮かせる躯体(壁・床)への振動の伝達を断つふつう〜専門業者向け防振ゴム・防振ハンガー・ゴム支持材

ここからは、それぞれの対策をもう少し具体的に見ていきます。

「巻く」対策|配管・ダクトのゴー音を「弱くしてから」漏らす

こんな症状なら「巻く」が効きやすい

次のようなケースは、配管やダクトからの直接音が強いパターンです。

  • PSの点検口を開けると、耳の近くでゴー音がしている
  • 水を流すと「ザー」「ドドド」といった音もセットで聞こえる
  • 金属ダクトや樹脂配管の外側を軽く叩くと、よく響く

この場合は、配管・ダクトに制振シートや遮音テープを巻き、その上から吸音材をかぶせると効きやすくなります。建材として販売されているブチル系の制振シートや遮音シートは、金属ダクトの共振を抑える用途でも使われています。

実際の巻き方のイメージ

  • 金属ダクト:ブチル系の制振シートや遮音テープを一周巻き、その上に薄いグラスウールや吸音スポンジを巻く
  • 樹脂・塩ビ配管:配管用の保温材スリーブをかぶせ、必要に応じてその上に細幅の遮音シートを巻く
  • ジョイント部:すき間ができやすい曲がり・継ぎ手周辺に、細幅の遮音テープを密着させる

ポイントは「重さ+吸音」を組み合わせること。重さのあるシートで音のエネルギーを減らし、周囲の吸音材で残った音をさらに弱めるイメージです。

注意点|巻きすぎ・密閉しすぎに要注意

  • 給湯配管・暖房配管など高温になる部分には、耐熱性のある専用品のみを使用
  • 結露しやすい配管をビニールテープでベタ貼りにすると、内部腐食の原因になることがある
  • 点検時に外せるよう、着脱可能なテープ留め・バンド留めを基本にする

賃貸では、原状回復ができる「巻くだけ」「外せる」範囲にとどめておくのが安心です。

「塞ぐ」対策|点検口・扉まわりを整えて音漏れをカット

ゴー音が「壁の向こう」から聞こえるとき

次のような場合は、PSそのものよりも「点検口や扉のすき間」から音が漏れていることが多いです。

  • トイレの天井点検口のまわりから、ぼんやりゴー音がする
  • 洗面所のPS扉を開けると、急に音が大きくなる
  • 扉のすき間に手を当てると、空気の流れを感じる

この場合は、室内側に出てきている音を減らす「塞ぐ」対策がメインになります。

かんたんにできる「塞ぐ」アイデア

  • 天井点検口のフチに、スポンジタイプのすき間テープを一周貼る
  • PS扉と枠の当たり部分に、戸当たりゴムや気密パッキンを貼る
  • 扉の内側に、薄手の遮音シートをマグネットシートなどで仮止めする

遮音シートは「重さがあるほど効きやすい」という性質があり、薄手でも扉一枚に追加すると音の通り道を減らせます。ただし、どれだけ良いシートを貼っても、すき間だらけでは効果が落ちてしまうため、「パッキン+シート」のセットで考えると効きやすくなります。

換気を殺さない・共用部を勝手に塞がない

パイプスペースやダクト周りは、建物の換気や防火の設計とも関係する部分です。特に賃貸・分譲マンションでは、

  • 24時間換気の吸気・排気ルートを塞ぐような施工はしない
  • 共用配管が通るPSやシャフトは、勝手に発泡ウレタン等で埋めない

といったルールが重要です。遮音シートを貼る場合も「点検口の内側に軽く重ね貼りする」「PS扉のみを重くする」といった範囲にとどめるのが無難です。

「浮かせる」対策と賃貸・持ち家別の考え方

振動が壁・床に伝わると一気にうるさくなる

配管やダクトがコンクリート躯体に硬く固定されていると、そこで生まれた振動が壁・床全体に広がり、「部屋全体がゴーと鳴っている」ような体感になります。本来は、防振ゴム付きの金具や防振ハンガーを使い、配管を少し「浮かせる」ように支持するのが理想です。

DIYでできる「軽めの浮かせる」工夫

本格的な支持金具の交換は専門業者の仕事ですが、次のような範囲ならDIYで試せることもあります。

  • PS内で配管が床面に当たっているところに、薄い防振ゴムシートを敷く
  • ダクトが壁にこすれてカタカタ言っている部分へ、薄いゴム板を両面テープで仮貼りする
  • 金属配管同士が触れている箇所に、ゴムチューブをかませて結束バンドで固定する

いずれも「構造を変えない・荷重を増やしすぎない」ことが前提です。配管が不自然に曲がったり、金具が傾いたりしたらすぐ元に戻しましょう。

賃貸のゴー音対策|まず管理会社に共有する

賃貸でPSやダクトのゴー音が気になるときは、自己判断での工事はNGです。おすすめの流れは次の通りです。

  1. 音が気になる時間帯・場所・録音をメモしておく
  2. 管理会社やオーナーに連絡し、「ゴー音が続いている」ことを共有する
  3. 点検結果を聞いたうえで、許可された範囲内で「巻く」「塞ぐ」レベルのDIYを行う

共用部のPSやダクトは建物全体の設備なので、「一部屋だけ勝手に塞ぐ」のは避けましょう。図面上でPSの位置や配管ルートを確認してもらえると、住戸の位置替えや将来の住み替えの判断材料にもなります。

持ち家ならリフォーム時にまとめて防音設計を

持ち家の場合は、内装リフォームや設備更新のタイミングが、パイプスペース・ダクトのゴー音対策のチャンスです。例えば、

  • PS内の配管・ダクトの支持金具を、防振仕様の金具に変更する
  • 金属ダクトに制振シートを巻き、周囲に吸音材を充填して「巻く+浮かせる」を同時に行う
  • PSまわりの壁・天井に遮音シート+吸音材を追加して、居室への音の透過を抑える

といった設計を最初から入れておくと、「ゴー音に悩まされにくい家」になりやすくなります。

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この記事のまとめ

パイプスペース・ダクトのゴー音は、「発生源を止める」のではなく「伝わり方を弱める」発想がポイントです。配管・ダクトに制振シートや吸音材を巻く、点検口やPS扉のすき間を塞いで音漏れを減らす、防振材で振動を浮かせる——この3つを、賃貸のルールや安全面に配慮しつつ組み合わせれば、体感のうるささをかなり抑えることができます。

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